セガより好評発売中のPlayStation 4ソフト「シェンムー I&II」をプレイしました。
シェンムーと言えばゲームファンなら誰もが知る言わずと知れたタイトルで、今日におけるオープンワールドゲームのパイオニアとして、後のゲーム業界にイノベーションを引き起こした画期的なタイトルと認識していますが、構想が膨大過ぎる故に1本のゲームソフトとして完成させることが難しく、シナリオを何分割かして1つのストーリーに仕上げる予定だった超大作だったものの、2001年に起こったドリームキャストの撤退とともにシェンムーの物語は未完のままとなっていました。
それから月日が流れて、2015年のE3で待望の続編「シェンムー3」がKickstarterによる資金調達で開発予定であることを発表。見事に資金を集めて開発が始められた後、現状、2019年8月27日に発売が予定されています。
それまでは、ネットのゲームニュースで偶にシェンムー3の話題が挙がっていることがあり、原作者の鈴木裕さんの元には世界中からシェンムーの続編を望む声が常に寄せられていて、御本人も機会があれば是非やりたいとおっしゃっていたのを何度か目にしていました。やはり企画自体が完全に止まっていたわけではなく、どうにかして開発にこぎつけないものかと足踏み状態が続いていたみたいですね。
僕のシェンムー歴は1作目こそプレイしなかったものの、2作目はドリームキャストの撤退の影響からか、新品で500円位で売っていたので価格に釣られて購入していました。確か、クリアこそしていなかったものの、「莎花」(シェンファ)には会っていたのでクリア直前までは到達していたはず。
そして何処で手に入れたか覚えていませんが、ドリームキャストの販促の指揮を取っていた湯川専務がシェンムーの舞台に登場する「What’s シェンムー 湯川(元)専務をさがせ」と、「湯川元専務のお宝探し」を持っていた記憶があります。いずれも非売品だったみたいですね。
さらに記憶を遡ってみると、当時購読していたゲーム雑誌で、確かシェンムーが正式発表されるよりも前だったと思いますが、本作が「プロジェクト・バークレイ」という名で呼ばれていた頃に、読者に対して「徹底的なリアルさを追求したゲームを開発していますよ!」ということをアピールするために、テープレコーダー(多分、レンのアジトで使うやつ?)のモデリングだけがピックアップされて紹介されていたのを朧気ながら覚えていたりします。
そんな思い出のあるシェンムーの1と2をクリアしましたので、プレイした感想(評価)を簡単にまとめておこうと思います。なお、多少のネタバレ要素を含んでいるので未プレイの方はご注意下さい、
「シェンムー I&II」とは
11/22 PS4®『シェンムー I&II』発売決定!
2枚組オリジナルサウンドトラックを同梱した限定版も同時発売!画質の向上、操作設定、ユーザーインターフェースの最適化など、リファインされた「シェンムー」をお楽しみください。https://t.co/yuDAKHouRp#shenmue pic.twitter.com/Xwl4k69zOk
— セガ公式アカウント (@SEGA_OFFICIAL) 2018年8月3日
本作はドリームキャストで発売された「シェンムー」と「シェンムーII」を、PlayStation 4向けにHDリマスター化してひとつにまとめたタイトルになります。
オリジナルから目立った追加要素は無いと思いますが、ハードのスペックが大きく飛躍したことにより、エリアチェンジによるロード時間がほぼ皆無にまで短縮されたことで遊びやすさが向上しています。
ストーリーは、謎の中国人によって自身の目の前で殺されてしまった父親の仇を討つべく、本作の主人公「芭月涼」が旅に出るお話です。基本的に一人旅ですが、彼の年齢はまだ18歳と若く、武術を心得ているものの仇を討ちたいと急ぐばかりで躍起になっていますが、ゆく先々で様々な人と出会い、協力を得たり、ときには教えを仰ぎながら少しずつ成長していく姿が描かれています。
感想
街並みの作り込みが半端ない
1作目の舞台となる横須賀の街はまさに昭和の時代そのもの。道場が併設された芭月涼の実家は木造の日本家屋そのものだし、今では見られなくなったブラウン管テレビや黒電話、芭月家にお手伝い?として従事する割烹着を着た稲さん。そして家から一歩外に出ると駄菓子屋や活気に溢れる商店街、路上で遊ぶ子供たちがいたりして、今の日本から消えつつある昭和の時代にあった懐かしい風景がゲームの中に広がっていました。
2作目は香港から中国の桂林へと旅します。僕は香港に行ったことはありませんが、イギリスと中国の文化が入り交じる場所柄、洋風の建物が一部で見られたり、路地に一歩足を踏み入れると迷い込んでしまいそうな迷路のような街並み、そこかしこでギャンブルに勤しむ人たち、公園で太極拳をする人々。
そしてスラム街には、空高く聳え立ちその外観からは壮麗ささえ感じさせる九龍城の不気味なまでの錆びついた廃墟感など、香港は横須賀とはまた違った異国の街並みが再現されているので、ちょっとした観光気分に浸ることもできました。
これだけでも非日常的ですが、香港を去った後に向かうことになる桂林では山深い森や変わった形をした山々など、自然が長い年月をかけて作り上げた長閑で美しい光景が広がっていました。
パッと見たときの街並みの印象だけでなく、お店や部屋などに置かれた生活雑貨にも要注目。細かく作り込まれているので、気になるアイテムがあればズームボタンを押して眺めてみるのもシェンムーの楽しみ方のひとつ。特に香港の再現にあたっては取材にも時間を費やしただろうし、細かい作り込みが開発費の高騰にも繋がったんだろうなぁということが伝わってきます。急ぎ足でゲームを攻略するのはちょっと勿体無いかもしれません。
時間という概念の導入
オープンワールドゲームのパイオニアとして知られるシェンムーですが、これまた当時としては珍しい“時間”という概念の導入によりリアルさがさらに追求されています。
例えばお店は決まった時間が来ないと開店しないし、閉店時間が来ると当然お店に入れない。約束があるときは時間まで待つ必要があったり。さらには街で生活する人々も時間によって行動していたりと、私達の日常生活と同じ時の流れがゲームの中で再現されていました。
ただ、ある時間まで待つ必要があるときに、何もすることがなくてコントローラーを放置してしまうことが何度かありました。ガチャガチャだったりゲームセンターで暇つぶしができますが、何しろお金がかかるので、こういうときに時間が早送りできる機能があれば良かったと思います。※シェンムー2は早送り可
NPCが生きている
横須賀や香港の街並みを歩けば、たくさんの道行く人達とすれ違うことができます。
この人達は前途した時間の概念に沿って行動しており、適当なNPCの後を付けてみると分かるのですが、自分の家へと戻る様子が見られたり、料理屋さんの店主がお店が開店する前に食材を買い出しに出かける様子とか、お店の人が出前から帰ってきて店へと戻る様子など、NPCはただ適当に街を歩いているだけではなく、各々のNPCごとにちゃんとした行動パターンが設定されており、ストーリーには直接関係なさそうな部分に対しても妥協しない、リアルさへの拘りに驚かされました。
また、シェンムーの基本的なゲームの流れは、人々から情報収集を行いながらフィールドを探索する俗に言う「お使い」をしながらストーリーを進行させていきますが、次の目的地の場所が分からないときは道行く人たちに話しかけることで、目的地までの道案内を尋ねることができます。
このときに返ってくる返事はひとつでなく複数用意されていたり、セリフも老若男女の違いやその人の性格が言葉に表れていて、受け取る返事の内容は同じであっても、ニュアンスの違いなど誰一人として一字一句同じ言葉を発する人はいません。
それに付け加えてNPCはフルボイス。ここまで作り込まれたNPCが登場するゲームは他では見たことがないし、”NPCが生きている”という表現を使ってもおかしくない拘りようです。
トロフィーが集めやすい
ゲームとは直接的に関係ありませんが、シェンムーの1と2いずれもトロフィーの獲得条件が緩いため、一部時限トロフィーはあるもののプラチナトロフィーが獲得しやすくなっています。
QTEコマンドが分かりにくい
褒めるところの多いシェンムーですが気になる点もいくつかあり、僕がひとつ挙げるならばそれは「QTE」になります。
画面の指示通りにコマンドを入力するQTEですが、シェンムーではイベントシーンなどで発生することが多いようです。僕はこれがほんと苦手でした。
十字キーやボタン単体の指示であればほぼ問題なく熟せますが、十字キーとコマンドを交えたQTEだと、咄嗟に画面に表示される指示が分かりにくいため入力すべきコマンドの把握が難しいだけでなく、失敗してしまうとイベントシーンやバトルを最初からやり直すことになってしまうことに正直ストレスを感じることもありました。
当時プレイしていた時も同じ様に感じていたので、実は今回シェンムーをプレイする時に、このQTEにちょっとした憂鬱さを感じていたのも事実です。
まとめ:一度は失いかけた名作をこの機会に
以上、「シェンムー I&II」の感想(評価)でした。
当時クリアできなかったシェンムー2を最後までプレイして、本作のタイトル「シェンムー(莎木)」の意味をようやく理解できたし、まるで大作ドラマを見ているかのようなスケールの大きさを感じると同時に、日本や香港などのロケーションを旅することで自分自身も芭月涼と一緒に旅をしているかのような錯覚を起こさせてくれる、恐らく他にあまり類を見ない類稀で独自性の高いゲームだと思いました。
シェンムー2の最後では、謎に満ちた壮大な物語が待ち受けていることを予感させるフィナーレには感動させられたし、早く続きをプレイしてみたいという気持ちにもさせられましたね。
正直、グラフィックや操作性など今のゲームと比べると見劣りするし、巨額な開発予算を消費者にアピールするもセールス的には失敗だったらしいのであまり印象が良くない面もあるかもしれませんが、当時の技術で作り上げた最高のゲームを現行機でプレイできるこの機会に、また待望の続編シェンムー3の発売でシェンムーに注目が集まるこの機会に、一度は失いかけたこの名作を多くの人に手に取ってもらいたいと思うと同時に、芭月涼と一緒に旅をしてもらえたらなと思います。
「シェンムー I&II」をプレイするには
PlayStation 4に対応したパッケージ版とダウンロード版が発売中です。
価格は3,990円(税抜き)、ダウンロード版の容量は約11.29GBになります。
ちなみにSteamでWindows PC版もあるようですが、どうやら日本からは購入することができないようです。